まとまったお金の運用として、保険の相談窓口などでおススメされていますが、外貨の為替レートや、解約控除、市場価格調整のリスクも含めて、正確に理解できている方は少ないようです。
この商品は、外貨だけでなく変額保険の特別勘定(要は株式)での運用も入っていたり、「ターゲットタイプ」と「定期引き出しタイプ」の、2種類があったりと、かなり難しい商品であり、外貨一時払い特有の注意点やデメリットもあります。
ネットの口コミを見ると、外貨の為替リスクは理解しつつも、商品自体がよく分からないし、実際どうなの?と迷う人も多いようです。
ネットの評判では、勘違いや間違った情報もあったので、この記事では、専門家としてできるだけわかりやすく、未来を楽しむ終身保険の、デメリットや注意点、詳細やメリット、長所短所などを、お伝えしていきたいと思います。
ではまず、デメリットの前に、未来を楽しむ終身保険の基本的な商品内容からです。
マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険の商品内容
名称 | 内容 |
---|---|
商品名 | マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険 正式名称:通貨選択型変額終身保険(積立利率更改型定額部分付) |
保障内容 | 外貨建ての一時払い終身保険で、運用通貨を米ドルか、豪ドルかを選択。 運用成果を毎年もらう「定期引出タイプ」か、円建てでの目標達成を狙う「ターゲットタイプ」のどちらかを契約時に選択。 運用期間は、10年もしくは15年。 |
最低金額 | ・最低2万ドル(米ドルで、約220万円、豪ドルで約180万円)~可能。 ※円ぴったり入金も可能。 |
取扱範囲等 | ・契約可能年齢: 15才~87才まで ・保険期間: 終身 ・保険料払込方法: 一時払いのみ(マニュライフ生命の指定する口座に振り込み) ・非喫煙者割引: なし ・配当金: なし ・健康診査(告知): 不要 |
公式HPの情報はこちらです↓
https://www.manulife.co.jp/tanoshimusyushin02
マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険は、外貨建の一時払変額終身保険で、米ドルにするか、豪ドルにするかは、契約時に選びます。
まとまったお金を預けて、それを保険会社に運用してもらおうという商品なので、保険料は一括払い(約200万円以上)で契約し、
・毎年、定期引き出し金として運用成果をもらう=「定期引出タイプ」
もしくは、
・契約者が決めた目標に到達したら、自動的に運用成果(つまり利益)を確定してくれる=「ターゲットタイプ」
で運用していく商品です。
こういった一時払いの外貨建て保険は、他社でもよくありますが、マニュライフ生命の未来を楽しむ終身保険は、契約者が預けたお金の2割程度を、特別勘定と呼ばれる株式などの積極運用する資産に分割して運用するのが特徴で、外貨の債券だけの運用と比べると変動幅が大きくなるので、ターゲットタイプであれば目標を達成しやすい(逆に下がる場合もある)という特徴があります。
特別勘定での運用もする、というのが未来を楽しむ終身保険のアピールポイントとも言えます。
ターゲットタイプとは??
ターゲットタイプの仕組みを簡単に説明すると、
契約者が預けた一時払い保険料は金利の高い外貨(米ドルか豪ドル)で運用されて増えていきつつ、1年経過後からは、ドル円の為替レートの変動で、契約者が設定した円建てでの目標(110%~200%の中で設定)に到達できたら、そこで運用は終了し、円建ての終身保険に移行する、というもの。
目標達成して円建終身保険に移行したあとは為替レートの影響は受けないので、達成以降は為替リスクはありませんが、それ以上は日本円だと低金利であまり増えないので、一括解約して日本円で受け取って終了、というような使い方のイメージです。
運用期間中(10年、もしくは15年)で目標達成しなかった時は、運用を継続するか、運用を終了して解約する形になります。解約時の受け取りは、日本円でもドルでも、どちらでも選ぶことができます。
ちなみに、外貨一時払いの保険を解約する時の返戻金の受け取りは、この商品に限らず、ほとんどの商品で、ドル受取でも円受取でも、好きな方で選べる商品がほとんどです。
定期引き出しタイプとは??
もう一方の、定期引き出しタイプは、
契約した1年後から毎年、運用成果を受け取っていくタイプです。
契約時に分けられた、特別勘定の部分を運用しながら、それを毎年一回、15分割(定期引き出しタイプは、運用期間15年のため)で受け取るイメージです。
ざっくり、2つの違いは以上です。
また、外貨の運用のベースとなっている積立利率は、毎月(1日と16日)に見直されて契約したときの利率が運用期間(10年か15年)中に適用されるので、高い時期に契約している方が有利ということになります。(ちなみに、男女や性別での違いはありません。)
なお、未来を楽しむ終身保険は生命保険ですが、運用メインの金融商品なので、支払った一時払保険料を上回る大きな死亡保障はついていなくて、
被保険者の死亡時には、基本保険金額か解約返戻金のどちらか多い方が、遺族(死亡保険金受取人)に支払われる、というものです。
なので、契約時に健康状態の告知はありませんので、持病がある人でも関係なく申し込みできる保険になっています。
続いて、「マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険」のデメリットや主な注意点などをお伝えします。
マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険のデメリットや短所・注意点など
△①一括払の契約なので、ドル高円安時の契約だと、少ししか買えない
未来を楽しむ終身保険は、契約時に一括払いでドルを購入する一時払の商品なので、契約した時(具体的には保険料を振り込んだ日)の為替レートが、ドル高円安(1米ドル140円とか)だと、ドルの購入量が少なくなってしまいます。
そのため、将来の解約や死亡時に日本円で受け取ろうとしたときに、保有しているドルの量が少ないと、為替レートによっては円換算したとき、元本割れしている恐れもあるのです。
なので、契約時の為替レートは、かなり重要です。(筆者の感覚では、1米ドル125円を超えているようなタイミングでの契約は辞めておいたほうがよいのかな、と思います)
△②為替レートは常に変動するので途中解約は注意が要る
ドル建なので、日本円にした金額は為替レートによって常に変わります。
そのため、いざ解約して使いたい、となったときに、ドル安円高(1米ドル80円とか)だと、元本割れだった!という注意点があるのです。
ちなみに参考として、過去、1993~2015年(23年間)でのドル-日本円の為替レートは以下のような数字でした。
円/米ドル | 円/豪ドル | |
---|---|---|
最大(円安) | 143.85円/ドル | 107.68円/ドル |
最小(円高) | 76.14円/ドル | 56.60円/ドル |
平均 | 107.31円/ドル | 80.67円/ドル |
最大と最小とでは2倍近いことと、1年間の中でもプラスマイナス20%程度(豪ドルなら、40%程度)は動いています。
特に目的を決めない余裕資金なら、ドル高円安まで待てるかもですが、子どもの教育資金のように時期が動かせない資金なら、注意がいります。
△③契約時や日本円に変えるときに為替手数料がかかる
外貨を円に(その逆も)換える時には、為替手数料がかかります。
未来を楽しむ終身保険の為替レートは、三菱UFJ銀行の為替レート(TTM)に対して、払い込むときには1ドルあたり50銭(0.5円)の為替手数料が、
受け取る時には、1ドルあたり米ドル1銭(※豪ドルの場合は3銭)の為替手数料がかかります。
※1ドルあたり50銭(0.5円)の為替手数料、と言われてもピンと来ないと思いますので、
1ドル=100円のとき、500万円で契約した場合。
500万円=5万ドル。5万✕0.5円⇒25,000円の為替手数料。
ざっくりですが、500万円で契約した場合で、約25,000円の為替手数料がかかるというと、無視できない金額でしょう。
△④途中解約すると解約控除として積立金から差し引かれてしまう
運用期間の途中で解約したときには、解約控除(※途中解約のペナルティのようなもの)が差し引かれてしまうことです。特に、契約期間が短いほど解約控除は大きく、1年以内で解約した場合などは10%も引かれるので要注意です。
ちなみに、ターゲットタイプで目標達成し、円建て終身に移行できた後なら、途中解約でも解約控除はかからないルールになっています。
△⑤市場価格調整がかかるので、解約時の市場金利によって解約返戻金が変動する
未来を楽しむ終身保険に限らず、一時払いの外貨建て商品には、「市場価格調整」といって、解約返戻金が解約時の市場金利に左右される、という仕組みを採用している商品が多いです。
(未来を楽しむ終身保険も、途中解約するときには「市場価格調整」の影響を受けます)
この、市場価格調整、実はかなりのくせものです。
ちなみに、市場価格調整とは??、パンフレットには以下のように記載されています。
さらっと、と書かれていますが、これを読んでも、??? ですよね。
ざっくり説明すると、
解約するときには、契約時の金利と、解約時の市場金利とを比較して、契約時の金利よりも解約時の市場金利が高い場合は解約返戻金が少なくなり、その逆に、契約時の金利よりも解約時の市場金利が低い場合は解約返戻金が多くなる、というもの。
解約時の金利が高いんなら、解約時のもらえる金額も大きいんじゃないの??と思いがちですが、実は、逆です。
なぜかというと、例えば、3.0%で契約した商品を、市場金利が2.0%のときに途中解約すると、保険会社はそれを市場に高く売却することができるため、その恩恵を解約返戻金に反映させますが、その逆に、3.0%で契約した商品を、市場金利が4.0%のときに途中解約すると、安くしないと市場に売れないため、そのマイナス分を解約返戻金に反映させて少なくなってしまう、というからなのです。
※ちなみに、市場価格調整は、運用期間(積立利率保証期間)の後半になればなるほど、影響は小さくなります。
なお、この市場価格調整を受けないためには、契約者が始めに決めた運用期間ぴったりで解約することです。そうすれば、市場価格調整の影響を受けずに解約することができます。
△⑥パンフレット記載の運用成果のシミュレーションは実績ではない
未来を楽しむ終身保険は、パンフレットに参考データとして、運用成果のシミュレーションが書かれていて、かなり見栄えが良いですが、これは実績値が書かれているわけではなく、パンフレットには以下のように、
として、注意書きが書かれています。
実績値なら説得力がありますが、パンフレットに記載されている運用成果のシミュレーションは、
「この商品の商品性にそって運用を行ったと仮定してシミュレーションしたもの」が記載されているので、運用成果に関して過度な期待はせず、ほどほどに考えていたほうがよいと思います。
以上、デメリットや注意点になります。
それでは続いて、長所やメリットもお伝えしますね!
マニュライフ生命・未来を楽しむ終身保険(外貨建)のメリット・長所
◎①外貨建の商品のため、円建よりも利率が高い
利率が高いのが未来を楽しむ終身保険のメリットです。
積立利率は、月2回見直しされていて最新は、以下(公式HP)↓
https://www.manulife.co.jp/MLJ_PWS_GaSa_Hybrid_InRateOPage?pageId=Inn
積立利率の過去の推移は以下(公式HP)↓
https://www.manulife.co.jp/MLJ_PWS_GaSa_Future_InRate_historyOPage
◎②特別勘定でも運用するので目標達成が期待しやすい
未来を楽しむ終身保険は、債券だけでなく、2割程度は特別勘定(要は株式など)で運用されます。株式だと価格の変動も大きいので、より目標達成が期待しやすいというメリットがあります。(その逆に下落幅も大きいので、メリットだけではないですが)
◎③1年経過後の目標判定では毎営業日、為替レートをチェックしてくれる
(ターゲット「目標達成」タイプのみ)
ターゲットタイプの目標判定のなかで超重要な役割である為替レートのチェックは、契約してから1年経過したら毎日(毎営業日)、保険会社がレートをみて判定してくれます。
他社では、為替レートの目標判定を月1回のタイミングでしかやってくれない商品もある(例えばメットライフ生命・サニーガーデンなど)のですが、未来を楽しむ終身保険は目標判定が毎日なので達成する確率が高いのがメリットです。
◎④円でもドルでも好きな方で受け取ることができる
未来を楽しむ終身保険の保険金、解約返戻金などは、円でもドルでも、契約者が好きな方で受け取れます。
受け取るときの為替レートをみて通貨を選べるのはメリットです。
◎⑤死亡保険金は、一時払い保険料相当額が指定通貨建てで最低保証されている
未来を楽しむ終身保険では、被保険者の死亡時に、遺族に死亡保険金が支払われますが、この死亡保険金は、一時払い保険料相当額が外貨建てで最低保証されていることです。
(ただ、外貨建てなので、受け取る時の為替レートによっては円換算したら元本割れしていることもあります)
◎⑥保険加入時の告知(診査)が不要
未来を楽しむ終身保険は生命保険ですが、死亡して何倍も増える、という商品ではないので、契約時の健康状態の告知は不要です。
余命宣告や入院中でなければ、契約できる商品になっています。
◎⑦生命保険商品なので、破たんしたときの法的な保護がある
未来を楽しむ終身保険に限らず、生命保険商品には、保険会社の破たん時に生命保険契約者保護機構があって、責任準備金(積立金とほぼ同じ)の90%までは守られる、というセーフティーネットがあります。
(保険会社が破たんしても、全額ではないですが法的な保護があるというもの)
通常の外貨預金だと、外貨預金は預金保険の対象外なので、それに比べると安心感があることですね。
以上が、「未来を楽しむ終身保険」のメリットや長所、魅力になります。
一時払の外貨建て保険を検討するときに、押さえておきたいポイント
さいごに、今回の未来を楽しむ終身保険に限らず、一時払いの外貨建保険を検討するときに、押さえておきたいポイントをお伝えします。
将来の受け取りにむけて、外貨預金口座は作っておきたい(できればネット銀行で)
未来を楽しむ終身保険のような外貨建て保険は、為替変動があるので、ドル安円高(1米ドル80円とか)のタイミングだと、円でなくて外貨で受け取ることも、想定されます。
なので、外貨で受け取るための、外貨預金口座は作っておきたいところです。
ちなみに、あまり知られていませんが、外貨での受取は受け取る時に、銀行側での「受取手数料」がかかりますが、この手数料は、基本的に契約者の負担になっています。
受取手数料は(金額にもよりますが)、大手メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ銀行等)だと、1万円を超えるケースもありますが、ネット銀行(楽天銀行、ソニー銀行、住信SBIネット銀行など)だと、手数料をかなり安く抑えられます。
なので、実際に外貨で受け取るときには、ネット銀行で外貨口座を開設されることをおススメします。
ポイントは以上です。
未来を楽しむ終身保険の金利の高さや特別勘定での運用は、メリットではありますが、デメリットや注意点も確認されたうえで、
検討する時は、他社も含めて、
・アクサ生命(アップサイドプラス)
なども一緒に、比べられたらよいと思いますよ!
お役に立てば嬉しいです。